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コラム

2020.07.28
健康 外来診療

「コロナうつ」って本当にあるの?

いまだ収束の兆しが見えない新型コロナウイルス感染症。最近は、健康被害のみならず、心理的・社会的な影響もテレビなどで多く報じられています。そこで今回は「コロナうつって本当にあるの?」という疑問にお答えします。

Q:「コロナうつ」は本当にあるのですか?

A:あります。

新型コロナは、世界中のほとんどの国を巻き込み、2020年7月23日現在で、死者数が62万人にのぼっています。間違いなく、第二世界大戦後、最悪の世界的災害といえるでしょう。 マスクの着用、手洗いや消毒の励行はよいとしても、感染の広がりを防ぐために、外出の自粛、移動の制限などが求められ、私たちの日常生活が変化してしまいます。普段ジョギングをしている人が、ジョギングを控えるなど、運動の機会が減少していると思います。また、カラオケ、ライブハウス、コンサート、スポーツ観戦など、気晴らしとして楽しんでいたことができなくなってしまった人も多いでしょう。こういった活動で、ストレス解消ができなくなると、うつになりやすくなります。 自宅に閉じこもる生活になりがちなことから、飲酒量が増加したり、ときには、家族と顔をつきあわせている時間が長くなり、家庭内のストレスが悪化する場合もあります。家庭の外での時間や活動と家庭での時間や活動のバランスがくずれてしまうからです。

私がこの原稿を書いている2020年7月下旬には、Go To キャンペーンの混乱、経済活動の再開に伴う、日本全国における新規感染者の増加が報じられています。新型コロナの感染は防がなければなりませんが、一方、経済活動への制限が強くなれば、「事業をやっていけない」という現実が発生します。経済活動の見通しの不透明さも、大きなストレスになります。 新型コロナへの偏見という現象もあります。新型コロナに罹っても、きちんと治った人は、もう他の人に感染を及ぼす危険性はありません。しかし、新型コロナに罹った人に、「まだ感染するのではないか」「感染予防をしていなかったのでは」といった偏見を持たれてしまう場合もあります。患者さんへの治療に当たっている医療従事者が、ご家族などから「新型コロナの治療なんて大丈夫なの?」とプレッシャーをかけられる場合もあります。

一方、新型コロナへの対応の中で、よい面も少数みられるように思います。やってみれば、仕事、授業、学会や研修の多くの部分がリモートで行えることが分かってきました。わが国では、いろいろな活動が東京に一極集中していることから大きな弊害を来しています。今後、リモートで重要な活動を行うことが定着すれば、地方の活性化につながると思われます。

「コロナうつ」にならないためにはどうすればよいでしょうか?安全な気晴らしを確保しましょう。リモートでの気晴らしは完璧ですが、直接の活動でも、「感染しない・させない」を確保して、楽しみましょう。たとえば、周囲4メートルに人がいない状況で運動しても、何の危険もありません。そのほかの気晴らしも、安全を確保して楽しめるものが、いろいろあります。

新型コロナも怖いですが、うつも困ったものです。正しい医学情報を確認して、みなさん自身を守ってください。「日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック」では、心療内科・精神科を開設しています。 もし、「コロナうつ」について、さらに知りたいことがありましたら、どうぞ、クリニックに相談においでください。

 

執筆者

秋山 剛
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック 心療内科・精神科 非常勤医師

東京大学医学部医学科 卒業。NTT東日本関東病院品質保証室室長、東京大学医学部附属病院非常勤講師、環太平洋精神科医会議 理事・事務局長、集団認知行動療法研究会代表世話人、東京英語いのちの電話名誉理事長・監事、こころのバリアフリー研究会理事長、国際病院認証支援機構副理事長。専門分野は精神医学における国際交流、産業精神医学、多文化精神医学、集団認知行動療法。

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