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コラム

2020.07.15
健康

「いつもと味が違う」「味が分からない」味覚障害の原因とは?

うだるような暑さが続くと、冷たい飲み物やアイスがついつい欲しくなってしまいます。海や夏祭り、真夏のイベントでお馴染みの屋台のかき氷、実はシロップの原材料はほとんど同じ成分で、香料や着色料で味の違いを作っているそうです。

現在も世界的な流行が続いている新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の自覚症状の一つとして、味覚異常が出現することが話題となりました。ただし、嗅覚や味覚の障害はインフルエンザや一般の「かぜ」でも生じることがあり、必ずしも新型コロナウイルスだけが原因ではありません。しかし、突然味覚が変わってしまったらすごく不安になります。

では、どのようにして私たちは「味」を認識しているのでしょうか。私たちのからだは口にしたものの味覚だけでなく、香り、見た目、舌触りを脳で統合して、「味」として感じているのです。

味覚の受容器は味蕾(みらい)といい、口の中に10,000個程度存在しています。その中にはさらにいくつもの味細胞が存在しますが、寿命は10日間で活発にうまれかわっています。味細胞は甘味、塩辛味、酸味、苦味、旨味の5種類の受容体をもち、私たちに味覚の感動を伝えてくれています。

味覚は年齢、性別、生活習慣、ストレスに大きく影響され、非常に個人差が大きいものです。
そのため、味覚障害の原因も複雑となりますが、大きく下記に分けられます。

  • ①舌の炎症(カンジダや細菌、ウイルス感染症、鉄分不足)
  • ②亜鉛不足(味細胞が十分作られなくなります)
  • ③神経の異常(脳腫瘍、中耳炎、顔面神経麻痺)
  • ④口腔内乾燥(薬剤性、心因性、加齢、シェーグレン症候群)
  • ⑤その他(消化管系疾患、肝疾患、糖尿病、妊娠)

以前、化学療法を開始した患者さんが『食べるもの全てが甘くなってしまって全く食欲がわかない』とお話されたことがあります。食事が思うように取れないことはQOL(Quality of Life:生活の質)を大きく損なってしまいます。

亜鉛や鉄は食事にも含まれていますが、日本食は亜鉛が少なく、欧米人よりも亜鉛欠乏になりやすいといわれています。これらのミネラル不足の状態を食事だけで改善することは難しいことが多く、サプリメントで補充してあげることも必要になってきます。

喘息などの治療中にステロイドの吸入薬を使用することがあります。ステロイドは非常に有効な薬である反面、カンジダなどの感染症を誘発することがあります。薬局でこまめにうがいをするようにと説明を受けたことがある方もいらっしゃると思いますが、予防を行っても口や食道にカンジダが感染し、味覚異常が出現することがあります。その場合は抗真菌薬の服用が必要になります。

最後にCOVID-19感染症の話になります。COVID-19感染症で生じる味覚異常は、実は嗅覚の障害によるところが大きいという報告があります。普通のかぜを引き起こすようなコロナウイルスも嗅覚異常と関連していることが知られていますが、他の症状がなく、嗅覚異常のみでCOVID-19陽性となることが報告されています。ウイルスが嗅覚神経に何らかの炎症を引き起こすと考えられています。

皆様、どうでしたか。味覚障害といっても原因は様々です。自分では判断が難しいことも多いですので、急激に味覚の変化が起こった場合は、まずは医師に相談してみてください。

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執筆者

大久保 栄高
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック 常勤医師
2009年九州大学医学部医学科卒業。JCHO九州病院(旧九州厚生年金病院)初期研修医、2011年より国立国際医療研究センター病院消化器内科後期研修医・フェロー・医員での勤務を経て、現在に至る。

【認定資格】
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医
日本食道学会 食道科認定医

 

<参考>
1)井関 富雄. 味覚障害の原因と対応. 大阪歯科大学同窓会報 2012;01 (185):31-37.
2)Noel Lorenzo Villalba et al. Anosmia and Dysgeusia in the Absence of Other Respiratory Diseases: Should COVID-19 Infection Be Considered? Eur J Case Rep Intern Med. 2020; 7(4): 001641.

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